悪魔

「右には父上の、左には母上の手を握ってるんだとする。
下は断崖絶壁、どちらかの手を離さなきゃならない。
もし、そうなったらどっちの手を離す?」

「私は…どうだろう。私には、決められないな」

「うん…そうだよね。俺も決められないと思う。でも…
やっぱり俺は、父上の手を離すかもしれない。
父上なら、どんなところにいても、必ず生きていられる…そう思うから」

「…そうだね、ヴォルマルフ様なら大丈夫だろうね」

私がそういうと、イズルードは嬉しそうに…そしてどこか誇らしげに頷いた。

「きっと、クレティアンは優しすぎるんだよ」

去り際に小さく呟いた。
小走りで消えてゆく背中を、微笑みながら見送った。

ねえ、イズルード。
もし、本当に、そんなことになってしまったら、君ならどうしただろう。
そして、私なら。
私の答えはとうに決まっているんだよ、と本当のことを云ったら、君はどんな顔をするのだろう。

「どちらの手も、離すよ」

何の躊躇いもなく。
こう云ったら、君はどんな顔をするのだろう。


C O M M E N T
イズルードの純粋さが大好きで、そして憎くてたまらないクレティアン。
踏みにじってやりたい思いに駆られつつ、それを押し殺しながら煩悶する瞬間が最高に悦い…とかいったら変態ですよね。でもそんな路線です。

イズクレってないもんかなぁ。

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